スカイマークのA380発注(2011年)を、判断の時点に戻って6段階の手順で設計し直した試算。数字を押すと根拠が開く ›
2010年の基本合意から2022年の再上場まで。出来事を押すと出所が開く ›
457億円が集中する計画だった段階1 逆算。基本シナリオ(A380の搭乗率70%、83円、本業が年130億円を稼ぐ)では成り立つ。線までの距離を見る。スライダーを動かすと再計算 ›
▲8.8ポイント(史実は▲10.1)/為替95円(直前5年の幅は80〜124円)65.6%を下回ると計画の価値はマイナス。納入時に借りられなければ、他が基準どおりでも破綻段階2 モンテカルロ1万回(相関あり)。基本シナリオ(会社の公表値と著者の推定)に、為替や搭乗率の振れ幅を持たせて五つの形を回した。振れ幅も著者が置いた。シナリオと指標を切り替える ›
形で変わるのは、負けたときに会社が残るかどうか段階3 確率を外した一本。為替79→83→100→110→120円、737の搭乗率▲3→▲11→▲12→▲13ポイント、納入時に借りられない。形を切り替えると差が残る ›
24億円は、2015年1月の民事再生の申し立て後の残高。届け出られた請求は3,089億円(申し立て時の負債711億円+帳簿に載っていなかった違約金・将来のリース料 約2,380億円)。確定1,543億円、弁済161億円段階4 選択肢の比較(基本シナリオ)。史実の形(A)は前払金だけで上限150億円を超えるので外す。採否はここでは決めない。選択肢を押すと、成り立つ条件が開く ›
| A 史実 | D | B | B2 | C | |
|---|---|---|---|---|---|
| 前提:打ち手で決まるもの | |||||
| 確定する機数 | 6機 | 6機 | 2機+購入権4 | 2機+購入権4 | 2機+購入権4 |
| 手当て | なし | 為替・融資 | なし | 為替・融資 | 為替・融資・上限・ゲート |
| 前払金(上限150億円) | 187 | 187 | 62 | 62 | 62 |
| 結果:基本シナリオで1万回試算 | |||||
| 資金が尽きる確率 | 28% | 14% | 10% | 7% | 5.5% |
| うちA380が原因(上限10%) | 25% | 12% | 8% | 4% | 3% |
| 損失・悪い側5%(許容180億円) | 469 | 449 | 164 | 148 | 35 |
| 負けたときの損の最大 | 620 | 616 | 455 | 492 | 62 |
| 計画の価値・基本シナリオ | +496 | +567 | +267 | +334 | +334 |
| 計画の価値・1万回の平均 | +538 | +642 | +352 | +383 | +381 |
段階5。全路線の搭乗率の前年差(会社が毎月公表)に、「▲8ポイント以下が3か月連続」という線を当てた。順に組み上がる ›
| 発動点 | 閾値 | 史実に当てると |
|---|---|---|
| T0 契約前 | 資金の確約なし/為替の手当てなし/解約の上限なし | 2011年2月に三つとも該当。確定発注しない |
| T1 搭乗率 | 前年差▲8ポイント以下が3か月連続 | 2012年7月上旬。新たな解約不能契約を止める |
| T2 予想 | 通期予想の下方修正が2回 | 2013年1月30日。オプションの判断を凍結 |
| T3 資金 | 本業の営業CF<A380の年間支出 | 2013年5月9日(11億円<45億円) |
| ゲート | 2013年3月末に搭乗率▲8以上か営業CF50億未満 | 両方該当。確定2機を解約し737に戻る |
6.6%から5.5%へ(支払いの前にもう一度判定すると3.7%)。効くのは p.5 のような悪い道筋に入ったとき同じAIが自分の設計を叩くと同じ穴に落ちる。別のAI(ChatGPT)に反論を出させ、著者のモデルで感度を再計算した。論点の洗い出しであって独立した検証ではなく、実務家のレビューは外部レビュー前でまだ。指摘を押すと再計算が開く ›
| 変えた条件 | 資金が尽きる | 180億超 |
|---|---|---|
| 案C(全部通る) | 5.5% | 0% |
| 上限条項が通らない | 5.7% | 0.4% |
| 4機確定(2011年2月の契約) | 8.7% | 12% |
| 鳴っても戻らない | 6.6% | 0% |
ここからは分析ではなく提案。2011年の時点で、経営トップと取締役会に出す1枚(たたき台)。
| 提案 | 長距離国際線への挑戦を支持します。6機で路線網をつくる構想は、勝つための正しい絵だと考えます。その6機に確実にたどり着くために、最初の契約を2機にすることを提案します(案C)。 |
|---|---|
| 理由 | 資金が尽きる確率を5.5%に抑え、負けたときの損を最大62億円に止めます(上限条項が取れなくても、史実の経路なら93億円で戻れる)。6機一括は4回に1回、6機のまま手当てしても7回に1回、資金が尽きます。 |
| 代償 | 案Dと比べ、平均の価値で261億円、うまくいったとき(上位5%)で約600億円を手放します。基本シナリオ1通りでは496億円が334億円になります。 |
| 2機で路線は組めるか | 1機あたり年300往復として、2機で年600往復。1路線を毎日飛ばせる規模です。国際線の固定費(年20億円)は機数によらず全額を負担する前提で計算しており、2機の割高さは数字に入っています。予備機がない点は残る課題です。 |
| 6機への道 | 残り4機は、条件を満たせば買える権利にします(判断は初号機の運航1年後)。計画どおりに近い未来(全体の57%)では7割、1万回全体でも56%で買い足し、6機がそろいます。 |
| 交渉の順番 | ①2機確定と解約の負担の上限 → ②上限が取れなければ2機確定とゲート → ③確定4機以上には進まない(損失が180億円を超える確率12%)。為替の固定と納入時の融資の確約は、どの段でも取ります。 |
| 止めるのは契約 | 2013年3月の判定基準(搭乗率と本業の稼ぎ)を、融資の約束事項とメーカーとの契約に書き込みます。割れば残り4機の購入権は失効し、追加の融資も止まります。続けたいときは、経営トップが貸し手と取締役会に例外を申し出て、理由を記録します。戻るときに失うのは前払金約49億円です(史実では6機分の253億円が戻らなかった)。 |
| 進め方 | 経営トップと1対1 → 財務担当の役員と主要な貸し手 → 取締役会の順に出します。採られなかった場合も、提案と理由を議事録に残し、発動点の見張りは続けます。 |
この分析でどこまでがAIで、どこからが人だったか。列を押すと、その列だけが浮かぶ ›
| 段階 | AIがやったこと | ヒトが決めたこと(今回) | 分析の後にヒトが決めること |
|---|---|---|---|
| 0 設定 | ── | 目的、許容損失180億、戻れない額の上限150億、踏まない領域三つ、止める仕組み(融資の約束事項と契約条項)。A380が原因の破綻10%までは分析の途中で足した線 | この枠を次の大型投資の審査に使うか |
| 1 逆算 | 破綻する境界(搭乗率▲8.8、為替95円)と計画の価値の計算 | その境界が過去の実績の範囲にあるかの判定。運航費・運賃・為替の転嫁率の置き方 | 「計画どおりならプラスだが会社を賭けている」という判定を受け入れるか |
| 2 分布 | 1万回の試行、支配変数の抽出、悲観シナリオとの比較 | 基本シナリオの置き方(公表値にない搭乗率と本業の稼ぎ)、振れ幅と相関 | 仮置きを承認するか置き換えるか。無異論も記録する |
| 3 ストレス | 史実と同じ経路での各案の帰結 | どの一本を置くか | どの兆候を見張るか |
| 4 選択肢 | 四つの選択肢の確率・損失・平均の価値の計算 | どの選択肢を並べ、何を成り立つ条件として書くか | どの選択肢を採るか |
| 5 発動点 | 公表値への当てはめ、誤報と見逃しの計算 | 閾値(▲8ポイント)、ゲートの時期、発動者 | 鳴ったら前払金を捨てて実際に戻るか。戻らなかった判断も記録するか |
| 証人 | 別のAIが指摘5点。検算はモデルで実施 | 証人を呼ぶと決めたこと。指摘の採否と判定のやり直し | 交渉の実務を知る人に、2機確定と解約の上限が通るかを確かめる |
| 提案 | 選択肢ごとの数字を渡すまで | 案Cを選ぶ理由、抵抗への答え、言い方(p.9) | 代償を受けるか。メーカーが受けなければやらないと決められるか。鳴ったら戻るか |
2011年、スカイマークはエアバスの超大型機A380を6機発注し、4年後に民事再生を申し立てました。この資料は、その発注を題材に、もし判断の時点に戻れたら、どのような形で投資を組めばよかったのかを考えたものです。後から分かったことではなく、2011年の時点で公開されていた情報だけを使っています。
計画どおりに進めば儲かる投資でも、負けたときに会社が残らない形で約束してしまうことがあります。大きく、戻れない投資の前に何を決めておけばよいのか。その手順を実際の事例に当てはめて試しました。
自分が同じ立場に置かれたらどう組むかを、一緒に考える材料になればと思います。右下の「▶ 音声」で解説が流れ、数字を押すと根拠が開きます。
鷲巣大輔(2026年9月30日公開、10月1日更新)
| 項目 | 値 | 確度 |
|---|---|---|
| 契約 | 2011年2月に4機確定+2機オプション。6月23日に2機も確定 | 公式(有報) |
| 発注総額 | 約18.8億ドル。1,559億円(83円)→1,916億円(102円) | 公式/推計 |
| 支出の予定 | 2012/3期61億、13/3期44億、14/3期82億、15/3期457億、以降239億、241億、419億円 | 公式 |
| 判断時点の体力 | 営業利益112億円、現金164億円、増資183億円(2011年6月) | 公式 |
| 支払済みの前払金 | 253億円(2014年6月末)。返還の形跡なし | 公式 |
| 為替と統治 | 為替予約なし。取締役4名、社外取締役ゼロ。議決権の約半分を一人の株主が持つ(契約時) | 公式 |
円建ての総額が増えたのは為替の前提が変わったためで、ドル建てではほぼ一定である。報道の「前払金265億円」は、シミュレーター前払いなどを含む建設仮勘定全体(264億円)と混同した可能性が高い。
資金調達は毎年の有価証券報告書に「リースバック等も検討」と書かれたままで、2014年3月末まで借入金はゼロだった。
| 形 | 史実と同じ経路での結末 | 戻らない額 |
|---|---|---|
| A 史実(6機確定) | 2015年3月期に破綻 | 432億円 |
| B 2機確定+4オプション | 2015年3月期に破綻 | 144億円 |
| B2 B+為替固定+資金確約 | 2016年3月期に破綻 | 146億円 |
| C B2+解約の上限+ゲート | 解約して737に戻り存続。現金309億円 | 35億円(実際のペースで約49億円) |
35億円は有価証券報告書の支出予定(2機分、2年間)から計算した値。実際の支払いペースは予定より速く、2013年3月末の累計は6機で146億円だったので、2機なら約49億円になる。
解約の上限条項が通らない場合は、請求の一部を負担して93億円(証人喚問後の検算)。
| 構造 | スカイマーク | 負担が軽かった例 |
|---|---|---|
| 全機を短期間で確定 | 契約から4か月でオプションも確定 | Virgin Atlanticは6機確定+6オプションで入り、納期を延ばした末に取消し |
| 前払金が返らない | 累計253億円。純資産の59%が建設仮勘定(2014年3月末) | 手付を別機種の発注へ振り替えた大手(Virgin、Air France) |
| 支払いが1年に集中 | 4年目に457億円。同期の営業CFは▲101億円 | 前払金を融資枠で賄い、納入時に返済する形 |
| 為替の手当てなし | ドル建て費用が売上の約半分。1円で4.9億円 | 大手は円建て調達と先物予約を併用 |
| 二つ目の解約不能契約 | A330リース10機。未経過リース料1,217億円 | 飛行時間に比例するリース料で運航する会社 |
| 「戻る」条件が数字でない | 戻る条件を数字で書いた記録は、公開資料では確認できない | 比較事例でも、取締役会が止めた例は未確認 |
| 条件 | 計画の価値 | 最低の現金 | 破綻 |
|---|---|---|---|
| 基準(A380搭乗率70%、83円) | +496 | 304 | なし |
| A380の搭乗率 60% | −634 | 71 | なし |
| A380の搭乗率 50% | −703 | −29 | 2017年3月期 |
| 為替 100円 | −562 | −33 | 2017年3月期 |
| 為替 120円 | −483 | −119 | 2015年3月期 |
| 737の搭乗率 ▲10ポイント | −390 | −15 | 2016年3月期 |
| 納入時に借りられない | −787 | −61 | 2018年3月期 |
| ▲10ポイント+100円+借入不能 | −593 | −418 | 2015年3月期 |
A380路線の損益分岐の搭乗率(機材費込み)は、83円で63%、100円で69%、120円で75%。
| 入力 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 手元現金 | 347億円(164億+増資183億) | 公式 |
| 本業の営業CF | 年130億円(2011年3月期は148億円) | 人の仮定 |
| A380の収入 | 394席、1往復の満席収入1.07億円、年300往復 | 報道の運賃から計算 |
| 運航費 | 1往復72万ドル | 二次情報からの推計 |
| 納入時の借入 | 支払いの5割(前年の本業が黒字の場合) | 当時の報道 |
| 為替の運賃転嫁 | 円安の5割 | 人の仮定 |
| 解約時の請求の実負担 | 請求の3割 | 人の仮定(破綻前の和解に関する報道は未確認) |
読み方の注意
| 形 | 資金が尽きる | A380が原因 | 損失 P95 | 180億超 | 価値 平均 | 価値 P50 | 価値 P95 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A 史実 | 28% | 25% | 469 | 28% | +538 | +566 | +2,110 |
| B 2機+4オプション | 10% | 8% | 164 | 1.7% | +352 | +182 | +1,524 |
| B2 +為替固定+資金確約 | 7% | 4% | 148 | 0.4% | +383 | +274 | +1,426 |
| C +解約の上限+ゲート | 5.5% | 3% | 35 | 0% | +381 | +248 | +1,423 |
| D 6機のまま手当て | 14% | 12% | 449 | 14% | +642 | +657 | +2,035 |
基本シナリオ=会社の公表値(予算為替83円、発注総額と支払い予定、運賃)に、著者の推定(A380の搭乗率70%、本業の営業CF年130億円、737の落ち込みなし)を足したもの。A380を買わない場合は2%。案Cでは5%がゲートで解約し、56%がオプションを行使する。基本シナリオそのもの(1通り)は史実の形で+496億円で、幅を持たせた平均+538億円とほぼ同じ水準。「資金が尽きる」は、増資や支払いの繰り延べなどの追加の手を打たずに、年度末の現金がゼロを割ること。
| 入力 | 幅 | 根拠 |
|---|---|---|
| 737の搭乗率の低下 | 三角 −4.5〜+4.5ポイント(平均0) | 基本シナリオでは落ち込みを見込まない。振れ幅は著者 |
| A380の搭乗率 | 三角 57.5〜82.5%(平均70%) | 会社は非公開。70%は著者の推定(業界誌の要約は60%) |
| 本業の営業CF | 三角 110〜150億円(平均130億) | 直近2期は148億、96億 |
| 運賃の実現率 | 三角 95〜105% | 「大手の半額」が通る前提 |
| 運航費 | 三角 60〜84万ドル/往復 | 飛行時間あたり2.5〜3.5万ドル |
| 為替 | 年率10%の変動 | 契約後4年の実績は77〜119円 |
| 相関 | 737の落ち込みが大きいほどA380の搭乗率も低い(係数−0.3。変数の向きの都合で負) | 人の仮定 |
悲観シナリオ:A380の搭乗率の真ん中を65%(45〜80%)、737の落ち込みを3ポイント(−2〜+12)、本業を90〜150億円、運賃を80〜105%に置くと、次のようになる。p.4 の「悲観」ボタンで図でも見られる。
| 形 | 資金が尽きる | 価値 平均 |
|---|---|---|
| A 史実 | 58% | −111 |
| B | 29% | −102 |
| B2 | 24% | −91 |
| C | 14% | −54 |
| D | 45% | −54 |
平均はすべてマイナスになる。差のほぼ全部は、A380の搭乗率(70%か65%か)と運賃の実現率の二つから来る。採算はこの見立てで割れるが、形の順番は変わらない。
| 兆候 | 観測値 | 公表 |
|---|---|---|
| 全路線の搭乗率の前年差 | 2012年4月▲9.4、5月▲14.8、6月▲15.3ポイント | 2012年5〜7月 |
| 新しい路線の搭乗率 | 成田発の路線が33〜45% | 2012年7月 |
| 四半期の営業利益 | 0.56億円(前年20.1億円) | 2012-07-31 |
| 通期予想の下方修正 | 158→113→49億円。翌年も2回 | 2012-10-30、2013-01-30 |
| 為替 | 契約時から10%超の円安(89円) | 2013年1月 |
本業の営業CF| 11億円<45億円 | 2013-05-09 | |
| 座席キロあたり収入<費用 | 8.39円<8.74円 | 2014-05-15 |
| 継続企業の注記 | 第1四半期決算で初出 | 2014-07-31 |
搭乗率の低下は、ドル円が78〜84円で動いていない時期に始まっている。2015年3月期の営業損失176億円のうち、為替で説明できるのは3割弱(推計)。
| 選択肢 | 資金が尽きる(A380が原因) | 損の最大 | 価値 平均 | 成り立つ条件 | 弱いところ |
|---|---|---|---|---|---|
| A 史実(参考) | 28%(25%) | 620 | +538 | ── | 前払金が上限150億円を超え、損失も許容180億円を超える |
| D 6機のまま手当て | 14%(12%) | 616 | +642 | 6機分の為替予約と納入時の融資の確約 | 前払金と損失の線を超え、7回に1回は資金が尽きる |
| B 2機+4機の購入権 | 10%(8%) | 455 | +352 | メーカーが2機確定と購入権を受ける(Air Austral 2009年の前例) | 戻る判定がなく、負けたときの損が大きい |
| B2 +為替固定+融資確約 | 7%(4%) | 492 | +383 | Bに加え、為替予約と融資の確約 | 抜ける費用に上限がなく、戻る判定もない |
| C +解約の上限+ゲート | 5.5%(3%) | 62 | +381 | B2に加え、解約の上限条項(取れなければ損の最大は約490億円)と、鳴ったら戻る統治 | 交渉と統治の両方が要る |
| E 別の機材で小さく試す | 未計算 | ── | ── | 双発機で長距離運航の認可が取れる | 認可に運航経験が要り、当時は取りにくかった可能性がある(未確認)。人が確かめる |
購入権(オプション)は行使の条件まで設計して初めて効く。行使はそれ自体が新しい戻れない約束なので、行使するのは、2割円安でも路線が損益分岐を超え、本業の営業CFが50億円以上あり、行使後2年分の支払いを現金と確約済みの借入で払えるときだけ。今の調子だけで行使する緩い条件では、案Bの資金が尽きる確率は20%になり、2機だけの場合(10%)より悪くなる。
三本目の線「A380が原因の破綻は10%まで」は、段階0では置いていなかった。損失の額だけで判定すると、会社をなくす危うさが見えないために足した線で、結果を見た後に置いたことを記録しておく。基本シナリオではB、B2、Cのどれもこの線の内側にある(8%、4%、3%)。Dはこの線がなくても、前払金と損失の二本の線で外れる。B2の損の最大(492億円)がB(455億円)より大きいのは、為替と融資を手当てすると資金が持つ期間が延び、支払いが進んでから尽きる試行が残るため。
反対意見:「2機では路線網にならず、整備と乗員の固定費を回収できない」「メーカーは新規の小さな会社に解約の上限を与えない」。どれを採るかは p.9(提案)で述べる。
| 形(案Cの構造は共通) | 資金が尽きる | 鳴ったが上振れを捨てた | 鳴らずに尽きた |
|---|---|---|---|
| ゲートなし | 6.6% | 0% | 6.6% |
| ① 2013年3月のゲート(本文) | 5.5% | 1.6% | 4.5% |
| ② 2014年3月のゲート(457億円の支払いの前) | 3.9% | 7.6% | 1.4% |
| ①+② | 3.7% | 8.0% | 1.3% |
| 参考:A380を買わない | 2.2% | ── | ── |
割合はすべて1万回全体に対するもの。②の判定は、為替95円以上、本業の営業CF50億円未満、現金200億円未満のどれか。
閾値を▲6、▲10ポイントに動かしても、①の資金が尽きる確率は5.5%で変わらない。▲8は震災後の最大の落ち込み(▲6.7)を超える水準として置いた。ただし▲6.7は2011年度(契約の後)の値で、この置き方には後知恵が混じる。契約時点の情報だけで置き直すのは今後の課題。2013年3月のゲートは、3月末の社内の月次数字で判定する前提(本業の稼ぎの公表は5月)。
証人の判定:致命。こちらの判定:重要。結論は倒れないが、強さが下がる。
| 条件 | 資金が尽きる | 180億超 | 損の最大 | 史実の経路の損失 |
|---|---|---|---|---|
| 案C(全部通る) | 5.5% | 0% | 62 | 約49億円(予定どおりなら35億円) |
| 解約の上限が通らない | 5.7% | 0.4% | 492 | 93億円 |
| 4機確定(実際の2月契約)+上限なし | 8.7% | 12% | 554 | 186億円 |
オプション付きの発注には実例がある(本件の契約自体が4機確定+2機オプション、Virgin Atlanticは6+6)。A380の2機確定にも前例がある(Air Austral が2009年に2機を確定発注。2012年に取消し)。解約の上限は業界標準ではなく、前払金の没収と損害賠償が標準である。
分かったこと:効いているのは機数とゲートで、上限条項は悪い側の尾を切る役目(上限がなければ損の最大は62億円から約490億円に広がる)。次に人がやること:交渉の実務を知る人に確かめる。
証人の判定:致命。こちらの判定:本資料で既に限界として挙げていた点。数字を足した。
| 鳴ったときに戻る割合 | 資金が尽きる確率 |
|---|---|
| 必ず戻る | 5.5% |
| 半分だけ戻る | 6.0% |
| 戻らない | 6.6% |
確率の差は小さいが、史実の経路のような悪い道筋では、戻るかどうかで会社が残るかが決まる。損失の上限(62億円)は、上限条項があれば戻らなくても変わらない。戻るかどうかは統治の問題で、モデルは答えを出さない。
判定:化粧。閉じた。
| 737に戻った後の搭乗率の低下 | 資金が尽きる確率 |
|---|---|
| 3ポイント(再建後の実績から) | 5.5% |
| 6ポイント | 5.6% |
| 9ポイント | 5.6% |
史実の経路で戻りを6ポイントに弱めても、会社は存続する(期末の現金117億円)。ただし再建後の実績(営業利益67億円)から置いた仮定であることは変わらない。
判定:化粧。閉じた。
| 変えた条件 | 資金が尽きる確率 |
|---|---|
| 案C(費用なし) | 5.5% |
| 借入額の10%の手数料・保険料 | 5.9% |
| 借入の確約が5割まで | 6.5% |
| 為替を固定できない | 6.6% |
手数料の水準(10%)は置いた値で、当時の実際の条件は確認していない。納入時の融資は、輸出信用機関の保証で機体価格の8割5分まで付くのが当時の標準とされ、本資料の5割は保守的な置き方である。
判定:化粧。閉じた。
| 閾値 | 発動 | 資金が尽きる | 誤報(鳴ったうち) |
|---|---|---|---|
| ▲6ポイント | 5.7% | 5.5% | 36% |
| ▲8ポイント(採用) | 5.0% | 5.5% | 31% |
| ▲10ポイント | 5.0% | 5.5% | 31% |
誤報は「鳴ったが、続けていれば計画がプラスだった」割合。▲8は、2011年度(震災の年)の最大の落ち込み▲6.7を超える水準として置いた。2011年度は契約の後なので、この置き方には後知恵が混じる。
| 変えた条件 | 資金が尽きる | 損失 P95 | 180億超 |
|---|---|---|---|
| 案C(全部通る) | 5.5% | 35 | 0% |
| 解約の上限が通らない | 5.7% | 118 | 0.4% |
| 4機確定+2オプション、上限なし | 8.7% | 289 | 12.2% |
| 借入の手数料・保険料10% | 5.9% | 35 | 0% |
| 借入の確約が5割まで | 6.5% | 62 | 0% |
| 為替を固定できない | 6.6% | 63 | 0% |
| 戻っても搭乗率が6ポイント低い | 5.6% | 35 | 0% |
| 鳴っても半分しか戻らない | 6.0% | 62 | 0% |
| 鳴っても戻らない | 6.6% | 62 | 0% |
数字は2026年10月に、基本シナリオで回し直したもの。証人が弱点を見つけなかった点:基準ケースの計画の価値がプラスであること。6機一括が会社を賭ける形であること。機数の段階化が最も効くこと。
証人は票を持たない。採用したのは、こちらがモデルの再計算と調査ノートで確かめられた指摘だけである。
| 仮定 | 置いた値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 737本業の営業キャッシュフロー | 年130億円(幅90〜150億円) | 2011年3月期148億円、2012年3月期96億円 |
| A380の搭乗率 | 70%(幅45〜80%) | 会社の想定は非公開。業界誌の要約は60% |
| A380の運航費 | 1往復72万ドル | 二次情報からの推計 |
| A380の運賃 | 上級席往復39万円、プレミアムエコノミー22.5万円 | 当時の報道 |
| 為替の運賃転嫁 | 円安の5割 | 人の仮定 |
| 搭乗率と為替の感応度 | 搭乗率1ポイント=8億円、1円=3.3億円 | 当時の開示から推計 |
| 解約時の請求の実負担 | 3割 | 人の仮定 |
| 737に戻った後の搭乗率の低下 | 3ポイント | 再建後の実績から。弱めた場合も検算済み |
| 割引率・相関 | 8%・−0.3 | 人の仮定 |
これらは著者が仮に置いた値で、判断する側の承認を前提とする。承認した場合も、異論なく通したことを記録する。
| 問い | 分かったこと | 変えたこと |
|---|---|---|
| オプションを持つ案の破綻が、2機だけより高いのはおかしくないか | 「今の調子が良ければ買い足す」という条件の誤り | 「その後の支払いに耐えられるか」で買い足す条件に改めた |
| 中央値も平均もマイナスなら、非合理な投資ではないか | 「期待値はプラス」は誤り。1通りの前提の値を期待値と呼んでいた | 撤回し、採算が見立てで割れることを分けて示した |
| A380を買わなくても7%が破綻するのは高すぎないか | 「円安に何も手を打たない」という仮定の産物 | 仮定の効き方の例として明記した |
| 本当に2機からがよいのか。FP&Aは普通、複数案を並べて「私ならこれ」と言う | 分析の段階で一案に絞っていた | 選択肢(p.6)と提案(p.9)を分けた |
| 経営トップが選んだ社外取締役に、止める力はあるか(AIに経営企画部長を演じさせて出た問い) | 止める力を持つのは契約の相手と資金の出し手 | 「止めるのは人でなく契約」にした(採否は人が決めた) |
| 上から目線に聞こえないか。挑戦を受け止める姿勢は出したい | 正しくても、通らなければ意味がない | 「6機の構想に確実にたどり着くために、最初の契約を2機にする」とした |
AIが速くしたのは、計算、再計算、反論の洗い出し、読み手の反応の再現だった。どの問いを立て、どの指摘を採り、どう言うかを決めたのは人である。計算が速くなっても、人の仕事は減らない。注意を向ける先が、計算から「何を問うか」に移る。