FP&Aの実務デモ
大型の投資判断を
どう設計するか
スカイマークのA380投資案件(2011年)で、6段階の手順をたどる
鷲巣大輔
公開情報と著者のモデルによる試算。本編は2011年2月の時点で分かることだけで組み、後知恵は印をつけて分けた。写真は生成画像で、実在の機体・空港ではない

6機の構想は支持する。ただし最初の契約は2機にし、戻れる条件を契約で結ぶ

要約。2011年2月、経営トップと取締役会に出す結論と理由。右下で詳しい1枚が開く ›

理由1 6機一括は、負けたときに会社が残らない
  • 為替がふつうに動くだけで、4年目に現金が足りなくなる
  • 4回に1回(28%)で資金が尽きる
  • 負けたときの損は最大620億円
理由2 2機から始めれば、負けても戻れる。6機はあきらめない
  • 資金が尽きる確率5.5%。負けても最大62億円で737に戻れる
  • 残り4機は条件つきの購入権。7割で6機がそろう
  • 代償は平均の価値で261億円
理由3 止めるのは人ではなく、契約
  • 2013年3月の判定基準を、融資の約束事項とメーカーとの契約に書き込む
  • 割れば購入権が失効し、追加の融資が止まる
  • 社内に止める力はない(社外取締役0人、借入なし)
議論の論点:意思決定者に決めてもらうこと
①平均の価値で261億円の代償を受け入れて、2機から始めるか
②メーカーが2機の確定と解約の負担の上限を受けなければ、やらないと決められるか(上限が取れなくても93億円で戻れる)
③2013年3月にゲートが鳴ったら、前払金を捨てて実際に戻るか。戻らなかった判断も記録するか
この三つは分析では決まらない。分析が示すのは、形ごとの資金が尽きる確率・損失・平均の価値と、成り立つ条件まで。数字の出所は p.5〜p.10
詳しい1枚(交渉の順番、2機で路線は組めるか、進め方) ›
結論と理由の数字は本資料の仮定による試算p.2

手順は6段階。人が先に決め、AIが計算し、人が形を選ぶ

入口は案件の規模と公開情報、出口は意思決定者に渡す1枚(p.2)。各段階で何を作り、誰が決めるか。色の違う2つ(段階0と検証)は、計算の前と後に人が挟む工程。段階を押すとそのページへ ›

段階0 設定(分析の前)
人が先に決める四つ
目的、許容損失、戻れない額の上限、止める仕組み。AIに渡す前に書く
p.4 ›
段階1 逆算
基準ケースはどこで崩れるか
搭乗率・為替・資金の境界と、計画の価値。境界が経験の範囲にあるかは人が判定
p.5 ›
段階2 分布
幅を持たせて1万回走らせる
形ごとの資金が尽きる確率と価値の分布。幅と相関は人が承認
p.6 ›
段階3 ストレステスト
悪い道筋を一本通す
この道筋に入ったとき会社は残るか。どの一本かは人が決める
p.7 ›
段階4 投資の組み方
機数・購入権・手当て・上限・ゲートの組み合わせを並べる
得るものと成り立つ条件。ここまでがAI。どれを採るかは人
p.8 ›
段階5 撤退の基準
止める数字を先に書く
閾値、ゲートの時期、鳴ったら誰が何をするか。契約と約束事項に書き込む
p.9 ›
検証(段階5と6のあいだ)
別のAIに反論させる
再計算できた指摘だけを採り、結論の強さを測る
p.10 ›
段階6 引き受けと記録
代償を引き受けるかを人が決め、記録する
人が置いた仮定の一覧と、分析の後に人が決めること
p.11 ›
一方通行ではない。段階4で新しい線が要ると分かれば段階0に戻る(今回は「A380が原因で会社をなくす確率10%まで」を途中で足した)。最後に答え合わせ(p.12)と、自分の案件への当てはめ方(p.13)を置く
手順:岡野原大輔『ヒトとAI』(岩波新書、2026)の考え方を、不可逆な投資判断の6段階に当てはめたもの(著者)p.3

段階0:分析の前に、人が四つのことを決めて書く

案件の規模を押さえ、分析が始まる前に、目的・許容損失・戻れない額の上限・止める仕組みを人が置く。数字を押すと根拠が開く ›

18.8億ドル
6機の発注総額。当時の為替で1,559億円。増資後の手元現金347億円の4.5倍、本業の営業キャッシュフロー148億円の10.5年分
457億円
4年目(2015年3月期)に集中する支払い。3年目までは年44〜82億円。支払いはドル建てで、為替の予約はない
0人
社外取締役の数。借入もなく、貸し手からの牽制も働かない。止める力は社内の人に期待できない体制
先に決めることこの案件で置いた値根拠
目的国内線737だけで稼ぐ会社が、長距離国際線で「大手の半額の上級席」という新しい柱を作る当時の公表内容
許容損失180億円。負けたときに失ってよい額の上限2011年の増資で集めた額まで
戻れない額の上限150億円。前払金のように、やめても戻らないお金の上限前払金は没収が業界の標準。A380は転売もできない
踏まない領域①為替の手当てがないドル建ての確定債務 ②納入時の資金調達が未確定のままの確定発注 ③発動点が鳴っている間に二つ目の解約不能契約を結ぶこと著者の案
止める仕組み人でなく契約。戻る条件を融資の約束事項とメーカーとの契約に書き込み、割れば購入権が失効し追加の融資が止まる社内に止める力がないため(上の0人)
「A380が原因で会社をなくす確率を10%まで」という線は、分析の途中で足した(p.8)。先に置けなかった線があったことも記録する
実際の契約に無かったものと、手順のどこで決めるか
2011年の契約(開示から)手順では
6機を一括で確定段階4 形を並べる(p.8)
為替の予約なし、納入時の資金は「検討」段階0 踏まない領域/段階4 手当て
戻る条件が数字で書かれていない段階5 戻る線(p.9)
社外取締役なし、借入なし段階0 止める仕組み
手順の各段階は、この案件に無かったものに一つずつ対応している。過去から学ぶことと、手順を示すことは同じ1枚になる
損失を戻せなくした構造を見る ›
出典:スカイマーク有価証券報告書(2011年3月期、2011年6月提出分)、決算短信、適時開示。許容損失と上限の値は著者の案p.4

このモデルでは、搭乗率が1割下がるか95円で資金が尽きる

段階1 逆算。基本シナリオ(A380の搭乗率70%、83円、本業が年130億円を稼ぐ)では成り立つ。線までの距離を見る。スライダーを動かすと再計算 ›

式:現金=前年の現金+本業の営業CF(130億−1円あたり3.3億−搭乗率1ポイントあたり8億)−その他投資30億−A380の支払い(ドル×為替)+納入時の借入+A380路線の貢献
+496億円
A380計画だけの正味現在価値(割引率8%)。左の線とは別の計算
破綻しない。最低の現金は304億円
破綻する境界:737の搭乗率▲8.8ポイント(後知恵実際は▲10.1)/為替95円(直前5年の幅は80〜124円)
A380の搭乗率が65.6%を下回ると計画の価値はマイナス。納入時に借りられなければ、他が基準どおりでも破綻
左の線は会社全体の期末の現金(737の本業を含む)で「会社が持つか」を見る。右の数字はA380に関わる出入りだけを割り引いた値で「張る価値があるか」を見る
感度と読み方の注意 ›
モデル:会社の資金繰りとA380路線の採算を年次で見る、著者作成の試算モデル。構造A(6機確定)。運航費・運賃・為替の転嫁率は人が置いた仮定。計画の価値は残存価値を含み、破綻時は737の本業を失う損を含まないp.5

このモデルでは、基本シナリオに振れ幅を持たせると、6機確定の形は28%で資金が尽きる

段階2 モンテカルロ1万回(相関あり)。基本シナリオ(会社の公表値と著者の推定)に、為替や搭乗率の振れ幅を持たせて五つの形を回した。振れ幅も著者が置いた。シナリオと指標を切り替える ›

シナリオ
指標
28%
6機確定の形(A)で資金が尽きる確率
基本シナリオに、為替や搭乗率の振れ幅を持たせた。それでも4回に1回は資金が尽きる。6機のまま為替と資金だけ手当てしても(D)14%。案Cなら5.5%
計画の価値の平均はどの形でもプラス(6機確定+538億円、案C+381億円)。形で変わるのは、負けたときに会社が残るかどうか
資金が尽きるかを左右する順:円安(1位)、A380の搭乗率の低さ(2位)、737の搭乗率の落ち込み(3位)
入力の幅と相関の仮定 ›
A 6機確定・手当てなし/B 2機確定+4オプション/B2 B+為替固定+資金確約/C B2+解約の上限+納入前ゲート/D 6機のまま為替と資金だけ手当てp.6

悪い道筋を一本置くと、6機確定は4年目に尽き、2機とゲートは35億円で戻れる同じ道筋を実際にたどった。2機とゲートの形なら損失約49億円で737に戻れた計算になる

段階3 ストレステスト。確率を外した一本。為替は直近5年の幅の上端へ(79→83→100→110→120円)、737の搭乗率はLCC参入を見込んで▲3→▲11→▲12→▲13ポイント、納入時に借りられない、と置いた。段階3の道筋に、実際の現金(公表値)を重ねる。設計した道筋は、実際にたどった道筋とほぼ同じだった。形を切り替えると差が残る ›

投資の形
点線は実際の現金(公表値)
▲733億円
6機確定の形(A)で、この道筋をたどった場合の4年目の不足額(モデル)
この道筋は設計上の一本で、確率は付けない。問うのは「この道筋に入ったとき、会社は残るか」。残らない形は、計画の価値が高くても採らない
後知恵実際の15年3月期の現金24億円は、2015年1月の民事再生の申し立て後の残高。届け出られた請求は3,089億円(申し立て時の負債711億円+帳簿に載っていなかった違約金・将来のリース料 約2,380億円)。確定1,543億円、弁済161億円
機数だけ2機にしても(B)、為替と資金も手当てしても(B2)、この道筋では資金が尽きる。ゲートで戻る形だけが残る
道筋を兆候に翻訳する ›
年次モデル。四半期の資金繰りは見ていない。道筋の置き方は著者の判断で、幅の上端を使った実際の現金は各年3月末の公表値(306→232→71→24億円)。モデルは14年3月期までも実際より現金を多く見ている(165億円に対し実際71億円)。年次モデルで四半期の資金繰りは見ていないp.7

6機一括を外すと選択肢は四つ。得るものと、成り立つ条件が違う

段階4 投資の組み方の比較(基本シナリオ)。6機確定の形(A)は前払金だけで上限150億円を超えるので外す。採否はここでは決めない。選択肢を押すと、成り立つ条件が開く ›

選択肢
A 6機DBB2C
前提:打ち手で決まるもの
確定する機数6機6機2機+購入権42機+購入権42機+購入権4
手当てなし為替・融資なし為替・融資為替・融資・上限・ゲート
前払金(上限150億円)187187626262
結果:基本シナリオで1万回試算
資金が尽きる確率28%14%10%7%5.5%
うちA380が原因(上限10%)25%12%8%4%3%
損失・悪い側5%(許容180億円)46944916414835
負けたときの損の最大62061645549262
計画の価値・基本シナリオ+496+567+267+334+334
計画の価値・1万回の平均+538+642+352+383+381
金額は億円。計画の価値は資金が尽きた年で計算が止まるため、資金が尽きやすい形(A・D)ほど平均が高めに出る(p.5)。手当ての「為替・融資」=為替予約と納入時の融資の確約、「上限」=解約の負担の上限条項。色の付いた数字は、人が先に置いた線を超えているもの
28%
A 史実の形:資金が尽きる確率
前払金だけで187億円になり、上限150億円を超える。三本の線をすべて超えるので、選択肢から外す
成り立つ条件:──
購入権は、その後の支払いに耐えられるときだけ行使する。今の調子だけで行使すると、案Bの資金が尽きる確率は20%になり、2機だけ(10%)より悪くなる
選択肢と条件の一覧 ›
モンテカルロ(基本シナリオ、相関あり、1万回)。A380が原因=本業だけなら生き残れた試行が、A380のせいで資金が尽きた割合。前払金は有価証券報告書の支出予定からp.8

戻る線は「搭乗率の前年差▲8ポイントが3か月続いたら」と、数字で先に書くその線は震災の年には鳴らず、2012年7月に鳴る

段階5 撤退の基準。会社が毎月公表する全路線の搭乗率に線を引き、鳴ったら誰が何をするかまで決めておく。段階5で置いた線に、実際の月次の搭乗率を当てる。順に組み上がる ›

線の▲8ポイントは、段階1で出した崩れる境界(▲8.8ポイント)を丸めた値。「3か月連続」は、月ごとのぶれで鳴る誤報を減らすため。毎月の公表値をこの図に載せていく
棒は前年同月との差(ポイント)。2011年度は震災後の落ち込みが最大▲6.7で、線に届かない。2012年4〜6月に3か月連続で線を超える
発動点閾値鳴ったら誰が何をするか史実に当てると
T0 契約前資金の確約なし/為替の手当てなし/解約の上限なし一つでも該当すれば確定発注しない(取締役会)2011年2月に三つとも該当。確定発注しない
T1 搭乗率前年差▲8ポイント以下が3か月連続新たな解約不能契約を止める(財務担当が貸し手と取締役会に報告)2012年7月上旬。新たな解約不能契約を止める
T2 予想通期予想の下方修正が2回オプションの判断を凍結(取締役会)2013年1月30日。オプションの判断を凍結
T3 資金本業の営業CF<A380の年間支出貸し手の約束事項に抵触。追加融資が止まる2013年5月9日(11億円<45億円)
ゲート2013年3月末に搭乗率▲8以上か営業CF50億未満確定2機を解約し737に戻る。続けるなら例外として記録両方該当。確定2機を解約し737に戻る
ゲートを2013年3月末に置くのは、4年目の大きな支払いの前で、戻る費用が2機分の前払金(支出予定で35億円)で済む最後の決算期だから
後知恵ゲートの判定は、メーカーの解除通知の約14か月前、A330初号機の受領の約13か月前にあたる
基本シナリオでは、ゲートが鳴るのは5%。資金が尽きる確率は6.6%から5.5%へ(支払いの前にもう一度判定すると3.7%)。効くのは p.7 のような悪い道筋に入ったとき
ゲートに意味はあるか、止められない事情 ›
線の根拠は段階1(p.5)と基本シナリオの試行。誰が動くかは著者の案出典:スカイマーク搭乗実績(会社ウェブサイト、翌月上旬公表)、決算短信、適時開示p.9

別のAIの反論5点を受けて感度を再計算した。結論は倒れないが、強さは下がった

同じAIが自分の設計を叩くと同じ穴に落ちる。別のAI(ChatGPT)に反論を出させ、著者のモデルで感度を再計算した。論点の洗い出しであって独立した検証ではない。実務家のレビューはまだ。手順の中では「検証」の工程にあたる。指摘を押すと再計算が開く ›

証人は票を持たない。モデルで再計算できた指摘だけを採り、「致命」の判定はこちらでやり直した。効いているのは機数とゲートで、解約の上限条項は悪い側の尾を切る役目だと分かった
① メーカーが受けるか2機確定と解約の上限は交渉で通るのか。通らなければ机上の案検算 ›
② 鳴っても戻れるか支配株主がいて社外取締役がいない体制で、実際に解約できるか検算 ›
③ 戻った先は固いか737に戻れば稼げる、は後の実績に頼った後知恵ではないか検算 ›
④ 手当ての費用為替固定と資金確約の費用と、信用力の限度が入っていない検算 ›
⑤ 閾値は後付けでないかゲートの誤報と見逃しの頻度が検証されていない検算 ›
12%
確定を4機にし、解約の上限条項も通らない場合に、損失が180億円を超える確率
2機確定なら、上限条項が通らなくても0.4%。悪い道筋での損失は93億円で、線の内側にある。効いているのは機数とゲート
変えた条件資金が尽きる180億超
案C(全部通る)5.5%0%
上限条項が通らない5.7%0.4%
4機確定(2011年2月の契約)8.7%12%
鳴っても戻らない6.6%0%
検算の一覧と、証人が見つけなかった点 ›
証人喚問:2026年9月、反証と未言語化の前提の2軸で各1回。検算は著者のモデルで実施p.10

四つの数字は人が置き、採る形と戻るかどうかも人が決める

この分析でどこまでがAIで、どこからが人だったか。列を押すと、その列だけが浮かぶ ›

見る列
人が置いた仮定の一覧 ›人が変えたこと ›
段階AIがやったことヒトが決めたこと(今回)分析の後にヒトが決めること
0 設定──目的、許容損失180億、戻れない額の上限150億、踏まない領域三つ、止める仕組み(融資の約束事項と契約条項)。A380が原因の破綻10%までは分析の途中で足した線この枠を次の大型投資の審査に使うか
1 逆算破綻する境界(搭乗率▲8.8、為替95円)と計画の価値の計算その境界が過去の実績の範囲にあるかの判定。運航費・運賃・為替の転嫁率の置き方「計画どおりならプラスだが会社を賭けている」という判定を受け入れるか
2 分布1万回の試行、支配変数の抽出、悲観シナリオとの比較基本シナリオの置き方(公表値にない搭乗率と本業の稼ぎ)、振れ幅と相関仮置きを承認するか置き換えるか。無異論も記録する
3 ストレステスト設計した悪い道筋での各案の帰結どの一本を置くかどの兆候を見張るか
4 投資の組み方四つの選択肢の確率・損失・平均の価値の計算どの選択肢を並べ、何を成り立つ条件として書くかどの選択肢を採るか
5 撤退の基準公表値への当てはめ、誤報と見逃しの計算閾値(▲8ポイント)、ゲートの時期、発動者鳴ったら前払金を捨てて実際に戻るか。戻らなかった判断も記録するか
証人別のAIが指摘5点。検算はモデルで実施証人を呼ぶと決めたこと。指摘の採否と判定のやり直し交渉の実務を知る人に、2機確定と解約の上限が通るかを確かめる
提案選択肢ごとの数字を渡すまで案Cを選ぶ理由、抵抗への答え、言い方(p.2)代償を受けるか。メーカーが受けなければやらないと決められるか。鳴ったら戻るか
AIに渡さなかった作業:需要予測の精度を上げること。当てにいく作業を渡すと、説明が整うほど人は納得し、止める判断が遅れる
仮定の効き方の例:悲観シナリオ(A380の搭乗率65%、運賃は平均5%低い)では、計画の価値の平均はマイナスになり(6機確定−111億円)、6機確定の形は58%で資金が尽きる。採算はこの二つの見立てで割れるが、形の順番は変わらない
手順:岡野原大輔『ヒトとAI』(岩波新書、2026)の考え方を、不可逆な投資判断の6段階に当てはめたもの(著者)p.11

答え合わせ:兆候は円安より前、2012年4月の搭乗率から出ていた

後知恵このページだけは、後から分かったことで組んである。2010年の基本合意から2022年の再上場まで。出来事を押すと出所が開く ›

4.5倍
発注総額 ÷ 判断時点の手元現金
発注総額1,559億円は、本業の営業キャッシュフロー148億円の10.5年分にあたる
支払いは3年間は年44〜82億円、4年目の2015年3月期に457億円が集中する計画だった
為替予約なし、社外取締役ゼロ、納入時の資金は「検討」。三つとも2011年6月の有価証券報告書に書かれていた
損失を戻せなくした構造を見る ›
出典:スカイマーク有価証券報告書・決算短信・適時開示、各社報道(各出来事の根拠パネル参照)p.12

自分の案件に当てはめるには:段階ごとに、用意する数字と人が先に決めることがある

大型で戻れない投資なら、業種を問わず同じ手順で組める。AIに渡す計算と、人が先に決めることを分けておく。

段階用意する数字(公開情報か社内データ)人が先に決めることAIに渡す計算
0 設定投資総額と支払いの時期、手元現金、本業の営業キャッシュフロー(直近3〜5年)目的、許容損失、戻れない額の上限、踏まない領域、止める仕組み──(ここはAIに渡さない)
1 逆算結果を左右する変数(稼働率・単価・為替など)の基準値と過去5年の幅基準ケースの置き方。境界が経験の範囲にあるかの判定年次の資金繰りモデル。崩れる境界と計画の価値
2 分布各変数の振れ幅と相関(過去の実績から)幅と相関の承認。無異論も記録する1万回の試行、支配変数の順位、悲観シナリオ
3 ストレステスト幅の上端・下端、起きうる外部の変化(参入、規制、災害)どの一本を置くかその道筋での各形の帰結
4 投資の組み方分割・オプション・解約条件・為替と資金の手当ての選択肢と費用どの形を並べ、何を成り立つ条件として書くか。どの形を採るか形ごとの確率・損失・平均の価値
5 撤退の基準毎月見られる先行指標(公表されるものが望ましい)閾値、ゲートの時期、鳴ったら誰が何をするか。契約と約束事項への書き込み過去データへの当てはめ、誤報と見逃しの頻度
検証──別のAIに反論させると決めること。指摘の採否反論の洗い出しと再計算
6 引き受けと記録──人が置いた仮定の一覧を承認すること。分析の後に決めることを決めること仮定の一覧と感度の整理
渡さない作業が一つある。需要予測の精度を上げること。当てにいく作業をAIに渡すと、説明が整うほど人は納得し、止める判断が遅れる
この表の入力欄と、段階1〜5の計算を一式にしたもの(Excelの入力表とモデル、手順に沿った問いの一覧)は準備中。この資料の数字を記入例として入れる
手順:岡野原大輔『ヒトとAI』(岩波新書、2026)の考え方を、不可逆な投資判断の6段階に当てはめたもの(著者)p.13
はじめに

2011年、スカイマークはエアバスの超大型機A380を6機発注しました。当時の為替で約1,560億円、手元の現金の4倍を超える約束です。この資料は、その発注を題材に、大型で戻れない投資の判断の前に、FP&Aが何を作って、誰に、どの順で渡すかを実演したものです。

語っているのは後からで、後知恵は免れません。ですから本編は、2011年2月の時点で公開されていた情報と、そこから置ける仮定だけで組んでいます。後から分かったことは、画面右上の「視点」を「その後」に切り替えたときだけ、印つきで出ます。

最初に結論の要約(p.2)と、手順の全体像(p.3)を置きました。そのあと、結論の数字がどう作られたかを段階0から6の順にたどり、最後に答え合わせと、自分の案件への当てはめ方を置きました。右下の「▶ 音声」で解説が流れ、数字を押すと根拠が開きます。

鷲巣大輔(2026年9月30日公開、10月7日 お手本の立て付けに改訂 v0.2)

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視点